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日常

※狂っていますし、暴力表現も暴言多いのでご注意ください

どうでもいいほど些細な出来事だった、いやそれすらも記憶に残らないほどに弱い動機。いったいどの単語がクロスケの癇に障ったか定かではないが、鱗が這ったこの頬に拳1つ分のクレーターが出来た。
「グアッ」
彼の一撃で体が後方へ吹っ飛び、本棚に背中を強打する。棚の本が数冊落ちてきた。頭に当たったら随分痛かっただろう。
クロスケは息を荒くし、怒りの眼差しをこちらに向けていた。まるで猛獣のようだ。
「いった〜〜〜…、お前…」
頬を押さえ、ゆっくりと立ち上がった。幸い脳震盪は起こしていない。
「ふざけとんちゃうぞ!!オルァ!!!」
「ッ!!」
体勢を整えて、怒声とともに仕返した。クロスケも体が吹っ飛び、ドタドタと倒れ込む。彼はまだ13歳なのに既にこんなDV野郎なのだ。これから更に手が付けられなくなってしまう。そうなる前に、殴ってでも導かなければならない…という正義感は3割、残りは苛立ちと力負けを危惧した焦りだった。まぁ自分も大概だ。それでも自分から手を出すことだけは避けている。
「あ〜〜クソッ!お前〜〜俺はともかくな〜〜〜他の人にそんなんする癖ついたら速攻ムショ行きやぞ!」
「!!、!」
何か言いたそうだが今はメモを用意する余裕さえないのだろう。
「何がそんなアカンかったか書けや!俺なんもせんと待​──」
ところが待たないのはクロスケの方だった。こちらが言い終わるか終わらないかぐらいの時に、破竹の如く殴りかかってきた。彼の拳には既に傷が出来ている。その腕を掴み背負い投げをした。大きな物音が何度も何度も響き渡る。
すると、壁の向こうからこちらへ声が届いた。
「お〜セックスしとんのか〜」
何か騒げば性行為だと決めつけてくる隣人の中年男性だ。クロスケを押さえつけながら壁に向かって言葉を吐いた。
「おっさんいっつも物音したらセックスにするやんけ!これのどこがセックスやねん!!こんなセックス事件やろ!!!」
「セックスセックスうるさいで〜」
「マジでバチ切れしそう」
目をかっピライて舌打ちをした。意識が隣人に行ったところで、クロスケはこちらの鳩尾に蹴りを入れて立ち上がる。
「うっ、お前と隣のおっさんのせいで生傷絶えんわ」
隣人に怪我を負わされたことは無いが、半分は隣人のせいということにした。
さて、振り出しだ。こんなことに労力を使いたくないと思いつつ、自分がやらねば誰がクロスケをまともな道へ引っ張るのだ、と歯を食いしばった。
「お前はほんま、楽器やるくせに、手そんなんにしてええんかよ…」
嘆けど届かず、そうして何度か殴りあって数分が経った。
ガチャり、と扉を開く音がしたが、そちらを気にしていられないほどに殴り合いが激化している。ただ、誰が来たのかは声で分かった。
「クロ!ステンさん!みてや俺のアイスの棒!!当たりやで!?これはきてるで!?完全に今年勝ったわ!……んん!!?」
この惨状をみたからか、楽しそうな声から驚愕の声へと一変した。
「はいこんにちはアカタキくんちょっとまってなこんのアホクロスケ!気に食わんかったらすぐ殴りよって!!反省せぇ!」
「〜〜!!」
「え!え!みんな何してるん!?」
当然の反応だろう。今日はクロスケと同い年の友人であるアカタキと、その友人のカルキが家に来る予定だったのだ。こんな有様だが。
「アカタキ、何で中に入らないんだ?」
スタスタと家の外から足音が聞こえる、不思議そうに尋ねるのはカルキだろう。早く自分もそちらに混ざりたかった。
「こ、これは…!おいカルキ!はよきい!はよって!!祭りや!祭り始まってるわ!!流石夏やな!!!」
「祭り…?」
もうダメだ、既にぐちゃぐちゃだった台風状態にアカタキというハリケーンが登場し、混沌を極めている。泣きたくなったところで突如銃声が響いた。
「うわ!なんや!?あっちも祭り!?」
「おいアカタキ!伏せろ!」
「ギャ!」
銃弾がステン宅の窓ガラスを割り、キラキラとガラスの雨が降り注ぐ。龍人の鱗を硬化させ、ガラスから自分とクロスケの身を守ったが、流石に色んな箇所に傷を負ってしまった。
喧嘩、隣人、怪我、祭り、暴動、窓ガラス、器物破損、銃声、それとあとなんだったっけ?情報過多と理不尽により怒りが頂点に達した。
「は〜〜〜〜〜〜!!!!??何??外のクソどもも追加で台風ハリケーンサイクロン仲良しこよしですか??しね!!!!!」
喧嘩は一時中断、クロスケとともに家から出てアパートの階段下を見た。パンイチの男に素っ裸の女、刺青の激しい男数名と顔を出している爺さん婆さん。まだ死人はいないようだ。
廊下の手すりに手を置いて、憂さ晴らし込みの声を送った。
「おい!!このクソ野郎ども人んちの前でなにドンパチやっとんじゃワレ〜〜!!」
「ちょ、ステンさん!祭りは!?」
「???」
「??」
「アカタキ!?」
こいつは先程から祭り祭りと、何を能天気にという気持ちが顔に出てしまったのか、カルキが大慌てでアカタキの口を塞いだ。
今はアカタキに対してどうこう言っている場合ではない。
「クロスケ!!窓ガラスとかの動画撮って!!」
器物破損に関する全て証拠をおさえ、届を出してやる。くすんだ窓ガラスを新品にするには丁度いい。
クロスケは携帯を構えてそこらじゅう満遍なく動画を撮った。緊急事態だということもあり、随分と聞き分けが良い。
「何やってんだ!二人とも伏せろ!」
カルキの警告も虚しく、銃弾が自分の肩の端を貫通した。
「ステン!肩が!」
だが、その事実よりも器物破損の立証に脳が動き、痛みの伝達が遅れている。まだ痛くない、今のうちに必殺技を繰り出した。
「喰らえ!器物破損傷害罪ビーーム!!」
と叫びながらハンドガンを数発撃った。
「ビームちゃうやん!」

数十分後、機動隊が入りその場は無事鎮圧されたのだった。

1週間分の疲れを感じている。クロスケも、外の騒動が乱入してきてからは気分も落ち着いたようで、調子良くベースを演奏していた。
「ほんでさ〜!俺のアイス棒な?当たりやったからさ、今度駄菓子屋一緒に行こや!期間限定で2本もらえるんやって!」
「!」
アカタキは相変わらずアイスの棒の話を続けている。「当たり」が相当嬉しかったようだ。
「お〜いってき〜。てかさ、明後日誰かゲーセン行かん?俺空きやねんけど」
「俺いく!」
平和な様子を眺めつつカルキは思った。

あの二人は一体何が発端で喧嘩してたのだ、と。​聞いてもみたが二人とも「なんでだっけ…」という顔をしてはまぁいいかとすぐに話題を変えた。それほど些細なことだったのだろう。

 そうしてまた日が暮れた。

翌日

「このアホクロスケ〜〜〜!人の財布すってくんなーーー!」

「〜〜!!!」

 カルキが扉を開くと再び殴り合いが開催されており、つい思った言葉が漏れてしまった。

「実は昨日のも祭りだったのか?」

「こんな祭り!日常的にあってたまるか!」

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